ぎすぎすした社会背景

ネットの「私刑」生む排除型社会・日本のこれから
価値観の多様化と排除型社会

私刑を生み出す社会背景

・炎上、私刑化はウェブに限らず、社会、地域、組織全体にはびこっている。
・ネットの私刑は、誰が、いつ、どこで行うか予想もできず、ブログや掲示板のサービス提供会社も関与が薄く、いったん火のついた炎上への対応は難しい。
・誰でも自由に利用できるが故に共有資源の枯渇を招いてしまう「共有地の悲劇」をベースに、排他主義同調圧力が柔軟な意見調整システムであるはずの集合地(ネットコミュニティー)を硬直化させてしまう「集合地の悲劇」。
・実名となれば、現在のように大勢の中の「名無しの一人」として私刑に参加することは難しくなるのではないか。

ジョック・ヤングの分析

前期近代
・労働と家族を中心的な価値として多数者への同調が重視される包摂型
中産階級の快適な生活
・基準から逸脱しても「同化」のために社会復帰やカウンセリングのプログラムが展開できる余裕があった。

後期近代
・分離と排除を基調とする排除型社会
グローバル化、雇用の不安定化、価値観の多様化、人々の「存在論的不安」が高まる。
・中心軸を失った人々は多様性ゆえに不安となる。
・排除型社会は不寛容を生み、メディアは「逸脱を暴き立てて不安を煽り」暴露産業となる。
・排除型社会では過去に回帰するノスタルジーを生み出す。

日本の場合

・株式市場の閉鎖性、政府の保護政策、日本語という言語圏に守られてグローバル化の影響をダイレクトに受けてこなかった。
バブル崩壊以降「カイシャ共同体」を守りながら、新規採用の抑制、若年労働者の非正規雇用化を進めてきた。
・ネットのコアユーザーは30代で就職氷河期世代と重なる。